連載「企業代理店経営論」 第4回(全4回・最終回)
企業代理店のKPIは何を測るべきか
——手数料収入だけでは測れない経営成果
——手数料収入だけでは測れない
企業代理店の「存在意義」「機能」「適正利益」「KPI」を考える連載、最終回
企業代理店の経営会議では、代理店手数料、営業利益、保険料、契約件数などが主要な数字として扱われることが多くあります。しかし、企業代理店の存在意義を「グループのリスクマネジメントを支えること」へ広げるのであれば、従来のKPIだけでは成果を十分に測ることができません。前回整理した「適正利益」の考え方を経営管理に落とし込むために、最終回では、企業代理店のKPIを5つの領域で設計する方法を考えます。
目次
手数料収入が増えれば、企業代理店の価値も上がるのか
例えば、グループ全体の保険契約を精査し、重複補償を整理して年間保険料を削減したとします。親会社にとっては明らかな成果ですが、代理店手数料は減少する可能性があります。
企業代理店の成果と、代理店手数料の増減は必ずしも一致しません。だからこそ、「グループにどのような価値を提供したか」を含めて測る必要があります。
KPIは「存在意義」から逆算する
KPIは、測りやすい数字を並べればよいわけではありません。本来は「この会社は何のために存在しているのか」から逆算して設計するものです。
連載第1回から見てきたとおり、企業代理店の存在意義を「グループのリスクマネジメントを担うこと」に置くのであれば、KPIもそこから導かれます。企業代理店の経営を評価する指標は、大きく5つの領域に分けて考えることができます。
企業代理店のKPI、5つの領域
1.財務——持続可能な経営になっているか
- 代理店手数料収入
- 売上高
- 営業利益・営業利益率
- 一人当たり売上高・営業利益
- 固定費比率
利益最大化だけではなく、必要な人材、システム、ガバナンスへの投資を行いながら、継続的に事業を運営できる収益構造かを見ます。
2.生産性——限られた人員で価値を生み出せているか
- 従業員一人当たり手数料収入
- 一人当たり取扱契約件数
- 契約一件当たり事務時間
- 定型業務の自動化率
- 残業時間
- 営業・顧客対応に使える時間の割合
企業代理店の生産性向上とは、単純に人を減らすことではありません。「事務に使う時間を減らし、グループへの価値提供に使う時間を増やすこと」と考えるべきです。
3.品質・ガバナンス——安心して任せられる代理店か
- 自己点検で把握した課題の改善率
- 不備・エラー件数
- 苦情件数と再発率
- コンプライアンス研修受講率
- 内部監査指摘事項の改善率
- 規程・マニュアルの整備・更新状況
企業代理店の品質は、「ミスがないこと」だけではなく「自ら改善できること」で測るべきです。
代理店のKPI、「手数料」だけになっていませんか。
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4.顧客・リスクマネジメント——グループにどれだけ価値を提供したか
- グループ全体の保険契約把握率
- リスク評価を実施したグループ会社の割合
- 補償重複・補償漏れの改善件数
- 保険プログラム見直しによる保険コスト改善額
- 事故件数・事故率、損害額の推移
- 保険金請求漏れの発見件数
- 保険金請求から支払いまでの期間
- グループ会社からの満足度
特に重要なのは、「代理店の売上にならない成果」もKPIにすることです。企業代理店のKPIは、代理店の利益とグループの利益を一致させるように設計する必要があります。
5.経営基盤——将来も価値を提供できる組織か
- 後継者・次世代経営人材の育成状況
- 業務マニュアル整備率、業務の属人化率
- 資格・専門人材の保有状況、研修時間
- デジタル化・AI活用率
- 従業員エンゲージメント、人材定着率
これらは今期の利益には直接表れなくても、5年後、10年後も企業代理店が価値を提供し続けられるかを見る重要な指標です。
KPIは多ければよいわけではない
実際の経営会議で、これらすべてを毎月追いかける必要はありません。「今年、経営として何を変えたいのか」を明確にしたうえで、重要な指標を10〜15項目程度に絞る方がよいでしょう。
KPIには実績値だけでなく、「目標→実績→差異→原因→対策」までセットで管理する。そうすることで、KPIは「数字を報告するための資料」から「経営を動かすための道具」になります。
親会社にもKPIを見せる
企業代理店のKPIは、代理店内部だけで共有するものではありません。例えば半年に一度、あるいは年に一度、「企業代理店価値レポート」として、財務、生産性、業務品質・ガバナンス、グループへの経済効果、事故・リスク、人材・組織の状況を親会社に報告します。
そうすれば、「今年はいくら儲かったのか」だけではなく、「今年、この会社はグループにどのような価値を生み出したのか」を議論できるようになります。
KPIは、企業代理店の存在意義を数字にするもの
企業代理店の存在意義は、理念だけでは証明できません。保険コスト、事故、補償、業務品質、人材・組織などの成果を継続的に測り、経営に報告する必要があります。
つまりKPIとは、単なる経営管理の数字ではありません。企業代理店が「なぜグループ内に存在するのか」を数字で証明するためのものでもあります。
企業代理店の経営管理を、「手数料収入を管理する経営」から「グループへの価値を管理する経営」へ。その転換が、これからの企業代理店には求められています。
本連載では、企業代理店の存在意義、機能、適正利益、そしてKPIを4回にわたって考えてきました。政策株式という従来の支えが薄れていく中で、企業代理店の価値は「関係」から「自ら証明するもの」へ変わりつつあります。本連載が、自社の企業代理店のこれからを考えるきっかけになれば幸いです。
関連コラム:連載第1回「政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか」、第3回「企業代理店は利益を出すべきなのか」をご覧ください。
よくある質問
企業代理店のKPIは、手数料収入や利益だけでは不十分なのでしょうか?
不十分です。例えば保険プログラムの見直しで保険料を削減すると、親会社にとっては成果でも、代理店手数料は減少する可能性があります。企業代理店の成果と手数料の増減は必ずしも一致しないため、財務に加えて、生産性、業務品質・ガバナンス、グループへの提供価値、経営基盤を含めて測ることが必要です。
KPIはいくつくらいに絞ればよいですか?
毎月の経営会議で追いかける指標は、10〜15項目程度に絞るのが現実的です。「今年、経営として何を変えたいのか」を起点に重要な指標を選び、単なる実績値の報告ではなく「目標→実績→差異→原因→対策」までセットで管理することが重要です。
親会社への報告は、どのように行えばよいですか?
半年に一度、あるいは年に一度、「企業代理店価値レポート」として、財務、生産性、業務品質・ガバナンス、グループへの経済効果、事故・リスク、人材・組織の状況をまとめて報告する方法があります。「いくら儲かったか」に加えて「グループにどのような価値を生んだか」を親会社と議論できるようになります。
連載「企業代理店経営論」(全4回・完)
第1回 政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか
第2回 価値で残る企業代理店に必要な5つの機能
第3回 企業代理店は利益を出すべきなのか——親会社から見た「適正利益」を考える
第4回 企業代理店のKPIは何を測るべきか——手数料収入だけでは測れない経営成果(本記事)
存在意義から逆算したKPI、一緒に設計しませんか?
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