KIBAN株式会社|保険代理店の外部経営管理本部

連載「企業代理店経営論」 第3回(全4回)

経営管理

企業代理店は利益を出すべきなのか
——親会社から見た「適正利益」を考える

企業代理店の「存在意義」「機能」「適正利益」「KPI」を考える連載、第3回

「企業代理店なのだから、利益を出す必要はないのではないか」。企業代理店の経営について話をしていると、こうした議論に出会うことがあります。一方で、「会社として存在する以上、一定の利益を出すべきだ」という考え方もあります。前回は企業代理店が担うべき5つの機能を整理しました。第3回では、その機能を支える土台として、企業代理店の「適正利益」をどう考えるべきかを取り上げます。

「利益を出さなくていい」は本当か

多くの場合、企業代理店が扱う保険契約は、親会社やグループ会社が保険料を負担しています。グループ全体で見れば、「グループが支払った保険料の一部が、代理店手数料としてグループ内に戻ってくる」という側面があります。

この構造を踏まえて、「企業代理店は利益を出さなくていい」という考え方が生まれるのは、理解できないことではありません。

しかし、だからといって「利益を出さなくていい」ということにはなりません。赤字が続くのであれば、親会社がその赤字を負担してまで代理店を保有する理由が必要になります。企業代理店にも経営規律は必要です

利益率が高ければ優秀なのか

逆に、利益率が高い企業代理店ほど優秀なのでしょうか。これも単純ではありません。

  • 人材育成に十分な投資をしていない
  • 業務品質向上のためのシステム投資をしていない
  • コンプライアンスや内部監査の体制が弱い
  • グループのリスク分析を行っていない
  • 事故削減や防災・減災への取り組みをしていない

本来必要な投資を行わず、その結果として利益が残っているだけかもしれません。

POINT

企業代理店にとって重要なのは、利益率を最大化することではなく、必要な機能を持続的に提供できる経営基盤をつくることです。

「代理店単体PL」だけで評価しない

企業代理店が親会社に提供する価値には、代理店自身のPL(損益計算書)には表れないものが多くあります。

  • グループ全体の保険契約を見直して保険料を削減した
  • 補償の重複を解消した
  • 補償漏れを発見した
  • 事故削減によって保険金支払額を減らした
  • 大規模事故の際に保険金請求を適切に支援した
  • 保険会社との交渉によって引受条件を改善した
  • グループのリスク情報を経営に提供した

保険料削減に成功した結果、代理店手数料が減少することすらあり得ます。代理店単体のPLだけを見れば「減収」ですが、グループ全体で見れば明らかな成果です。

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「代理店利益」と「グループ利益」を分けて考える

企業代理店の経営を評価するのであれば、代理店自身の経営として健全かという視点と、グループ全体にどれだけ経済的・非経済的な価値をもたらしているかという視点の、両方が必要です。

  • 代理店としての成果:代理店手数料、営業利益、一人当たり生産性、業務効率、業務品質、ガバナンス水準
  • グループに対する成果:保険コストの最適化、補償内容の適正化、事故件数・損害額の削減、保険金回収の最大化・迅速化、リスク情報の集約、リスクマネジメントの高度化

この両方を見なければ、企業代理店の本当の価値は測れません。

では、「適正利益」とは何か

企業代理店の適正利益について、一律に「営業利益率○%」と決めることは難しいものです。

企業代理店が確保すべき利益とは、「必要な経営基盤を維持し、将来に向けた投資を行いながら、親会社に説明可能な水準の利益」ではないでしょうか。

  • 人材を育成するための費用
  • システム・AI・デジタルへの投資
  • コンプライアンスや内部監査体制の整備
  • リスクマネジメント機能の高度化
  • 将来の経営人材の育成

企業代理店に必要なのは、「利益最大化」ではなく「持続可能性を確保する利益」という考え方です。

利益を「目的」ではなく「結果」として考える

企業代理店に利益は必要です。しかし、利益そのものを最大化することが企業代理店の目的とは限りません。

グループのリスクを把握し、適切な保険プログラムを設計し、事故を減らし、事故が起きたときにグループを支え、経営にリスク情報を届ける。そして、それらの機能を継続的に提供できる経営基盤をつくる。

こうした役割を果たした結果として、適正な利益が残る。企業代理店の経営は、その順番で考えるべきではないでしょうか。

「いくら儲かったか」から「いくら価値を生んだか」へ

企業代理店の経営会議で、売上や営業利益を確認することはもちろん必要です。しかし、それだけでは足りません。

企業代理店の経営評価を、「いくら儲かったか」から「グループにいくら価値を生んだか」へ。そのうえで、その価値を継続して生み出すために必要な利益水準を考える。それが、これからの企業代理店における「適正利益」の考え方ではないでしょうか。

関連コラム:連載第1回「政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか」、第2回「価値で残る企業代理店に必要な5つの機能」をご覧ください。

よくある質問

企業代理店は赤字でも問題ないのでしょうか?

グループが支払った保険料の一部が手数料としてグループ内に戻る構造があるとはいえ、赤字が続くのであれば、親会社がその赤字を負担してまで代理店を保有する理由の説明が必要になります。企業代理店にも経営規律は必要であり、「利益を出さなくていい」ということにはなりません。

利益率が高いほど良い経営だといえますか?

必ずしもそうとはいえません。人材育成、システム投資、コンプライアンスや内部監査の体制整備、リスク分析など、本来必要な投資を行わなかった結果として利益が残っているだけの場合もあります。重要なのは利益率の最大化ではなく、必要な機能を持続的に提供できる経営基盤をつくることです。

適正利益の水準は、どのように決めればよいですか?

一律に「営業利益率○%」と決めることは困難です。必要な経営基盤の維持費用と、人材・システム・ガバナンスなど将来に向けた投資額を積み上げ、親会社に説明可能な水準として設計するのが現実的です。その際、代理店単体のPLだけでなく、保険コストの最適化や事故削減などグループ全体にもたらしている価値もあわせて評価することが重要です。

連載「企業代理店経営論」(全4回)
第1回 政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか
第2回 価値で残る企業代理店に必要な5つの機能
第3回 企業代理店は利益を出すべきなのか——親会社から見た「適正利益」を考える(本記事)
第4回 企業代理店のKPIは何を測るべきか——手数料収入だけでは測れない経営成果

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