KIBAN株式会社|保険代理店の外部経営管理本部

連載「企業代理店経営論」 第2回(全4回)

経営管理

価値で残る企業代理店に必要な5つの機能
——「保険を扱う会社」から「グループのリスクマネジメントを担う会社」へ

企業代理店の「存在意義」「機能」「適正利益」「KPI」を考える連載、第2回

前回のコラムでは、政策株式の縮減をはじめとする環境変化の中で、企業代理店が「グループだから存在する会社」から「グループに価値を提供するから存在する会社」へ変わる必要があることを取り上げました。では、その「価値」とは何でしょうか。単に保険料を安くすることでも、保険会社との関係を維持することでもありません。第2回では、企業代理店だからこそ担える機能を、5つに整理して考えます。

1.グループのリスクを「見える化」する機能

企業代理店の最大の強みは、グループ企業の中にいることです。事業内容、拠点、設備、取引先、従業員、過去の事故、保険契約。外部の保険代理店では簡単には把握できない情報に接することができます。

しかし、「情報を持っていること」と「リスクを把握していること」は同じではありません

  • どの会社に、どのようなリスクがあるのか
  • どのような保険が付保されているのか
  • どこに補償の重複や空白があるのか

こうした情報を横断的に整理し、グループ全体で共有できる形にすることが出発点になります。企業代理店を、単なる「保険契約の管理部署」ではなく、グループのリスク情報が集まる場所に変えていく——これが第一の機能です。

2.保険を「買う側」の専門家になる機能

企業代理店は保険を販売する立場であると同時に、親会社・グループ会社から見れば、保険を購入する側の専門家でもあります。

企業にとって重要なのは、「どの保険会社の商品を販売するか」ではありません。自社のリスクに対して、どのリスクを保有し、どのリスクを保険に移転し、どの程度の補償を確保するのか。そのうえで、どの保険会社から、どのような条件で保険を調達するのかを判断することです。

POINT

「保険会社の商品を売るプロ」から「企業として保険を買うプロ」への転換です。

3.事故・災害時にグループを支える機能

保険の価値が最も問われるのは、契約したときではありません。事故が起きたときです。

  • 保険会社との連絡・調整
  • 保険適用の確認
  • 必要書類や事故情報の整理
  • グループ各社との情報共有
  • 保険金請求の進捗管理

さらに、事故情報を蓄積し、原因分析や再発防止まで考える。企業代理店が「事故処理の窓口」から「事故を減らすための機能」へ進化することで、グループのリスクマネジメントに直接貢献できます。

5つの機能、自社にはどこまで備わっていますか。

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4.経営にリスク情報を届ける機能

企業代理店が持っている情報には、経営にとって重要なものが少なくありません。

  • 事故件数や保険金支払額の推移
  • 拠点別・事業別の事故傾向
  • 保険料の上昇
  • 保険会社の引受方針の変化
  • 新たに顕在化しているリスク
  • グループ会社ごとの保険管理状況

例えば年に一度でも「グループ・リスクレポート」を経営会議や取締役会に提出する。企業代理店が持つ情報を、「保険情報」から「経営情報」に変換する機能が必要なのです。

5.自らを経営する機能

どれほどグループに価値を提供していても、代理店自身の業務品質やガバナンスに問題があれば、その存在を正当化することは難しいでしょう。

  • 経営計画
  • 収益・生産性管理
  • 人材育成
  • 業務標準化
  • コンプライアンス
  • 内部監査
  • IT・デジタル活用
  • 事業承継や経営人材の育成

「特定の人がいるから運営できる代理店」ではなく、経営の仕組みによって運営できる代理店にすることが重要になります。

5つの機能を持つと、企業代理店の意味が変わる

あらためて並べると、①リスクを見える化する、②保険を買う側の専門家になる、③事故・災害時にグループを支える、④経営にリスク情報を届ける、⑤自らを経営する、の5つです。

これらの機能を持つ企業代理店は、もはや単なる「保険を扱う会社」ではありません。グループ全体のリスクマネジメントを支える専門組織です。

政策株式や長年の取引関係が企業代理店を支えていた時代には、企業代理店自身が「なぜ自分たちは存在するのか」を深く考える必要はなかったかもしれません。しかし、その環境は変わりつつあります。これは企業代理店にとって危機であると同時に、チャンスでもあります。

企業代理店の価値は、親会社や保険会社との関係によって決まるものではありません。これからの企業代理店には、自らの存在意義を、自ら設計し、自ら証明していくことが求められています。

関連コラム:連載第1回「政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか」、業務品質の枠組みは「損保協会「代理店業務品質に関する基本的な考え方」に全会員会社が賛同」をご覧ください。

よくある質問

5つの機能とは何ですか?

①グループのリスクを「見える化」する機能、②保険を「買う側」の専門家になる機能、③事故・災害時にグループを支える機能、④経営にリスク情報を届ける機能、⑤自らを経営する機能——の5つです。これらを備えた企業代理店は、単なる「保険を扱う会社」ではなく、グループ全体のリスクマネジメントを支える専門組織になります。

5つすべてを一度に整備する必要がありますか?

いいえ。まずは自社に5つの機能がどこまで備わっているかを棚卸しし、グループの特性や親会社の期待に照らして優先順位をつけることが現実的です。多くの場合、①のリスク情報の集約と、⑤の経営基盤(業務品質・ガバナンス)の整備が土台になります。

小規模な企業代理店でも、こうした機能は持てますか?

規模に応じた設計が可能です。すべてを内製する必要はなく、外部の専門機能を組み合わせながら、グループのリスク情報が集まる場所としての役割を果たすことが重要です。「特定の人がいるから運営できる」状態から、仕組みで運営できる状態へ移行することが出発点になります。

連載「企業代理店経営論」(全4回)
第1回 政策株式がなくなった後、企業代理店はなぜ存在するのか
第2回 価値で残る企業代理店に必要な5つの機能(本記事)
第3回 企業代理店は利益を出すべきなのか——親会社から見た「適正利益」を考える
第4回 企業代理店のKPIは何を測るべきか——手数料収入だけでは測れない経営成果

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