KIBAN株式会社|保険代理店の外部経営管理本部
業界動向

保険代理店は「自らを管理する会社」へ

——9月11日監督指針改正案が示したもの

9月11日、金融庁は「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表しました。企業内代理店規制の再構築、独占禁止法遵守態勢の構築、企業向け損害保険商品のモニタリング高度化、そして別個登録の廃止。一見ばらばらに見える四つの改正項目を、損害保険代理店の経営という視点から眺めると、一つの共通した方向性が見えてきます。本コラムでは、この改正案が保険代理店に何を求めているのかを整理します。

9月11日、金融庁は「保険会社向けの総合的な監督指針」の一部改正案を公表しました。損害保険会社の管理態勢に加え、損害保険代理店の業務運営にも大きく関わる改正で、10月13日までパブリックコメントを募集しています。

改正は、2024年6月の「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書や、同年12月の金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告書での提言を踏まえたものです。金融庁は改正の柱として、企業内代理店に関する規制の再構築、独占禁止法遵守態勢の構築、企業向け損害保険商品のモニタリング高度化などを挙げています。

改正案の概要——四つの改正項目

概要資料を見ると、改正項目は大きく四つあります。企業内代理店規制の再構築。独占禁止法遵守態勢の構築。企業向け損害保険商品のモニタリング高度化。そして、別個登録の廃止です。

一見すると、それぞれ別々の問題を扱った改正のように見えます。しかし、損害保険代理店の経営という視点から眺めると、この四つには一つの共通した方向性が見えてきます。それは、保険代理店を誰かに依存した「販売の器」としてではなく、自ら管理し、判断し、説明できる一つの経営主体として捉えようとしていることです。

なお、いずれもまだ「案」の段階であり、確定した制度ではありません。特に企業内代理店規制では、経過措置の撤廃は2030年4月、特定者の範囲拡大は2032年4月と、相応の準備期間が設けられています。慌てて動く必要はありませんが、方向性を見誤らないことが大切です。

企業内代理店に求められる「自立」

今回、最も大きな制度変更の一つが企業内代理店に関する規制です。企業内代理店は、親会社やグループ会社の保険契約を取り扱うことで一定の代理店手数料収入を得ているケースがあります。金融庁は、こうした構造について、代理店としての実務能力が十分でなくても存続できる場合があることや、代理店手数料が実質的な保険料の割引となっているおそれを問題視しています。

一方で、すべての企業内代理店を一律に否定しているわけではありません。今回の改正案では、手数料の適正化と態勢整備に関する一定の要件を満たす代理店を特定契約比率規制の適用除外とする仕組みが示されました。態勢整備の要件として金融庁が掲げたのが、特定契約を自ら把握・管理・報告できる態勢、独占禁止法遵守態勢、そして三線管理をはじめとするコンプライアンス・リスク管理態勢です。金融庁自身が、これらを「親会社等からの自立」と位置付けている点は興味深いところです。

つまり、問われるのは企業内代理店であること自体ではありません。親会社にぶら下がる代理店なのか、自ら管理機能を持つ代理店なのか。その違いが問われ始めています。

独禁法対応は、保険会社任せでは済まなくなる

二つ目は、独占禁止法遵守態勢です。保険料調整問題を受け、今回の改正案では、保険会社と保険代理店の双方に対して、独占禁止法上問題となる行為を防止するための態勢整備を求めています。

ここも重要です。これまで代理店のコンプライアンスというと、保険業法や募集ルールを中心に考えがちでした。しかし、企業向け保険や共同保険に関わる代理店では、競争法まで含めた管理態勢が必要になってきます。

保険会社から指示されたことを守るだけでは足りません。代理店自身も、何が問題となり得る行為なのかを理解し、自ら防止する仕組みを持つことが求められます。

保険会社にも「自律的な管理」を求める

三つ目は、企業向け損害保険商品のモニタリング高度化です。保険料調整問題では、代理店だけでなく、保険会社側の管理態勢にも課題がありました。

今回の改正案では、保険料率の適切性を確保するため、経営陣主導による管理態勢の整備、割引増等の運用検証、契約単位の収支分析や保険料水準の検証、三線管理などを求めています。ここで示されているのも、「現場に任せる」のではなく、経営としてリスクを把握し、検証し、改善するという考え方です。

「別個登録」廃止が意味するもの

そして、代理店経営という観点から特に注目したいのが、別個登録の廃止です。これまで損害保険代理店では、一つの法人でありながら、支店を複数の代理店として登録することが認められてきました。その結果、同じ法人の中でも、ある支店はA損保、別の支店はB損保というように、それぞれ異なる損保会社から教育・管理・指導を受ける運営が可能でした。

今回、金融庁はこの仕組みについて、同一法人でありながら支店ごとに異なる管理を受けることは、代理店ガバナンスの統一性を欠き、顧客本位の業務運営に支障が生じるおそれがあるとして、別個登録を廃止する方針を示しました。

これは単なる登録手続の変更ではありません。金融庁が代理店を見る単位を、「支店」から「法人」へ移そうとしていることを意味します。

一つの会社なのであれば、一つの経営方針、一つのコンプライアンス態勢、一つのガバナンスの下で運営されるべきです。ある意味では当然の考え方です。しかし、歴史的に保険会社との関係を基礎として支店ごとに運営されてきた代理店にとっては、決して小さな変更ではありません。

関連コラム:保険会社と代理店の関係の変化は「「ハ方式廃止」で本当に変わるものは何か——比較推奨販売改正は、代理店の営業ルール改革ではなく経営管理改革である」を、代理店自身に求められる体制整備は「保険代理店の体制整備義務とは——保険業法294条の3をわかりやすく」をご覧ください。

四つの改正に共通するもの

企業内代理店には、親会社からの「自立」を求める。代理店には、保険会社任せではない独禁法遵守態勢を求める。企業向け保険では、保険会社に経営陣主導の管理態勢と三線管理を求める。そして別個登録を廃止し、同一法人の代理店を一体として管理することを求める。

こうして並べてみると、今回の監督指針改正の方向はかなりはっきりしています。「誰かに管理してもらう代理店」から、「自らを管理できる代理店」へ。

これまでの損害保険代理店は、保険会社の販売チャネルとして発展してきました。その歴史の中では、教育、業務管理、商品知識、コンプライアンスなど、多くの機能を保険会社が担ってきました。

しかし今回の改正案から見えるのは、その関係の修正です。保険代理店自身が経営管理機能を持ち、自らの判断と責任で業務を管理し、その合理性を説明することが求められています。

自社の経営管理機能は、いまどの段階にあるでしょうか。

誰が業務を管理し、誰がリスクを把握し、問題が起きたとき誰が検証するのか——外部の目で現状を整理するところから、KIBANの30分無料相談でお手伝いします。

無料相談を予約する

問われるのは規模ではなく「経営管理機能」

では、代理店は何を準備すべきなのでしょうか。重要なのは、規程を一つ増やすことではありません。

自社の業務を誰が管理しているのか。リスクを誰が把握しているのか。問題が起きたとき誰が検証するのか。経営者はそれを把握しているのか。そして、改善する仕組みがあるのか。そうした経営管理機能そのものを点検する必要があります。

今回の監督指針改正は、主として企業内代理店や企業向け損害保険を念頭に置いたものではあります。しかし、その底流にある考え方は、それだけにとどまらないのではないでしょうか。

保険代理店を一つの独立した経営主体として扱う。今回の改正案は、企業内代理店、独禁法、別個登録という一見異なる問題を通じて、その方向をこれまで以上に鮮明に示しています。

代理店に求められているのは、規模の拡大ではありません。自らを管理できるだけの経営管理機能を持つことです。

よくある質問

今回の改正案は、企業内代理店ではない一般の損害保険代理店にも関係がありますか

関係があります。独占禁止法遵守態勢の構築は保険会社と保険代理店の双方に態勢整備を求めるもので、企業向け保険や共同保険に関わる代理店であれば企業内代理店でなくても対象になります。別個登録の廃止も、支店を複数登録している損害保険代理店すべてに関わります。

支店ごとに別個登録している代理店は、いつまでに何をすればよいのですか

概要資料には廃止の方針が示されていますが、既存登録の移行手続や期限までは記載されておらず、パブリックコメント後に確定する内容と登録先の損害保険会社からの案内によることになります。今できるのは、支店ごとに異なる管理の受け方や社内ルールを法人単位で棚卸しし、一つのガバナンスの下に揃えていく準備です。

「三線管理」とは何ですか

現場部門が第一線として自らリスクを管理し、コンプライアンス・リスク管理部門が第二線として現場を牽制・支援し、内部監査部門が第三線として独立した立場で検証する、というリスク管理態勢の考え方です。今回の改正案では、企業内代理店の態勢整備要件と損害保険会社の保険料率管理の両方で言及されています。

まとめ——KIBANからの提言

今回の改正案はまだパブリックコメント中の「案」であり、企業内代理店規制には2030年4月・2032年4月という準備期間も置かれています。いま代理店に必要なのは、細部の対応を急ぐことではなく、底流にある「自らを管理できる代理店へ」という方向を読み取り、自社の経営管理機能を点検することです。誰が業務を管理し、誰がリスクを把握し、問題が起きたとき誰が検証して改善につなげるのか。この問いに経営者自身が答えられる状態をつくることが、規模の大小を問わず、これからの代理店経営の土台になります。

KIBANは、保険代理店の外部経営管理本部として、経営管理機能の現状点検から三線管理の枠組みづくり、法人単位のガバナンス整備まで、代理店が「自らを管理する会社」になるための実務に伴走します。独占禁止法をはじめ法的な判断が必要な場面では、弁護士等の専門家につなぐ橋渡し役を担います。

参照した主な情報源

  • 金融庁「『保険会社向けの総合的な監督指針』の一部改正(案)の公表について」(2026年9月11日)公表ページ、同(別紙1)新旧対照表、(別紙2)改正(案)の概要
  • 損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議「報告書」(2024年6月25日公表) 報告書PDF
  • 金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」報告書(2024年12月25日公表) 報告書PDF
Management Support

「自らを管理できる代理店」への準備、経営管理機能の点検から始めませんか。

「監督指針の改正が自社にどう関わるのか整理したい」「三線管理や内部監査を、自社の規模で無理なく回る形にしたい」「支店ごとにばらばらな管理を法人として一本にしたい」——そうしたご相談を承っています。まずは、誰が何を管理しているのかの棚卸しから始めます。

無料相談を予約する

支援の内容を先に知りたい方へ。サービスの詳細と、個別のご相談窓口はこちら。

サービスの全体像を見る お問い合わせ
「誰かに管理してもらう代理店」から、「自らを管理できる代理店」へ。経営管理機能の点検を、30分の無料相談から。オンライン・無理な勧誘はいたしません。相談日を選ぶ