代理店社長は、一人で何役までできるのか
——CxOを共同利用するという経営の選択肢
——CxOを共同利用するという
明治安田生命の「マトリクス経営」から、中小代理店の経営機能を考える
2026年4月、明治安田生命が「マトリクス経営」という体制に移行しました。社長がすべてを決めるのではなく、国内保険・海外保険・資産運用といった「事業長」に加えて、CFO、CHRO、CCO、CRO、CIO、CDO、CPrO、CAIOといった「CxO」を並べ、それぞれに一定の判断権限を委譲する。狙いは意思決定のスピードと、事業軸・経営基盤軸という複数方向からの監視・牽制だといいます。2026年7月に発行された同社の「価値創造」報告書2026でも、AIをはじめとするデジタル技術の進展や資産運用環境の複雑化により各領域に求められる専門性が高度化しているとして、社長から事業長・CxOへ判断を一定程度委ね、事業と経営基盤の複数軸で監視・牽制を働かせる狙いが説明されています。これは一見、超大企業だけの話に見えます。CFOもCHROもCAIOも、売上数千億円の会社だから置けるのだ、と。しかし、本当にそうでしょうか。
経営機能は、会社の規模で消えない
売上5億円の代理店であっても、経営として判断しなければならないことは、実は明治安田とそう変わりません。
- 資金繰りと投資判断(=CFO機能)
- 採用・評価・育成(=CHRO機能)
- 保険業法・金融庁対応(=CCO機能)
- 事業承継・M&A・大口失注リスク(=CRO機能)
- システムと情報セキュリティ(=CIO機能)
- AI・DXの導入判断(=CAIO機能)
規模が小さくなっても、判断そのものは消えません。消えるのは、その判断を専任で担う人です。
多くの代理店では、これらすべてを社長一人が兼務しています。あるいは、兼務すらできず「気づいたときには手遅れ」という形で放置されています。
明治安田の話は、実は「大企業の高度な経営論」ではなく、「経営に必要な機能は何か」という、規模に関係のない問いを突きつけています。
一人がダメなら、雇う。雇えないなら、どうするか
普通の答えは「専門人材を雇う」でしょう。
しかし中小代理店がCFO人材、CHRO人材、CAIO人材を、それぞれフルタイムで雇用するのは現実的ではありません。給与水準も、必要な稼働量も見合いません。CFO相当の判断は月に数時間で足りるかもしれないのに、フルタイムで一人雇えば固定費だけが重くのしかかります。
ここで発想を変える必要があります。
大企業がCxOを「専任で内製化する」のに対し、中小企業はCxO機能を複数社で共同利用するという選択肢を取ることができます。
一社ではフルタイムを賄えなくても、数社が同じ機能を分け合えば、専門性の高い人材を「必要な分だけ」使うことができます。CFO機能を一社で抱えるのではなく、10社で共有すれば、1社あたりのコストは十分の一で済みます。
これは目新しい発想ではありません。中小企業向けの顧問税理士、顧問社労士は、まさにこの「共同利用モデル」で何十年も機能してきました。それを、財務や人事だけでなく、コンプライアンス・リスク管理・IT・AIといった経営機能全体に広げるだけのことです。
社長が一人で兼務する
判断は消えないが、専任で担う人がいない。兼務すらできず「気づいたときには手遅れ」になりやすい。
専任のCxOを雇う
固定費が重い。CFO相当の判断は月に数時間で足りるかもしれないのに、フルタイム分の人件費がかかる。
CxO機能を
複数社で共同利用する
必要な分だけ使う。10社で共有すれば1社あたりのコストは十分の一。顧問税理士・社労士と同じ共同利用モデル。
自社に必要な経営機能のうち、「空席」になっているのはどこですか。
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「外部経営管理本部」という答え方
これが、KIBANが「外部経営管理本部」と呼んでいるものの本質です。
代理店社長に対して、「経営企画も、人事も、法務も、財務も、AIも、全部自分でやってください」と言うのではなく、「必要な経営機能を、必要な分だけ、外部から共有してください」という提案をします。
CFO機能、CHRO機能、CCO機能、内部監査機能、AI・DX機能——これらを社長が一人で抱え込むのではなく、複数の代理店で分け合いながら、専門性の高い支援を受ける。これは規模の小さい会社が、規模の大きい会社と同じ経営品質を実現するための、ほぼ唯一の現実的な方法だと考えています。
代理店社長への問い
明治安田のマトリクス経営から得られる問いは、実はシンプルです。
あなたの会社に必要な経営機能は何か。
そのうち、あなたが「本当に」一人で担うべきものはどれか。
CFOも、CHROも、CCOも、AIの目利きも——全部を一人でやろうとする必要はありません。必要な機能を、必要な分だけ外部から共有する。それだけで、代理店経営の景色は変わります。
関連コラム:「AI時代に問われる、保険代理店の法人営業力」、連載「企業代理店経営論」第2回「価値で残る企業代理店に必要な5つの機能」もあわせてご覧ください。
参考資料
- 明治安田生命保険相互会社「2026年4月1日付 組織改正、人事異動、役員の業務担当変更のお知らせ」(2026年2月27日)
- 明治安田生命保険相互会社「『価値創造』報告書 2026」P45-46「経営管理体制の高度化」(2026年7月発行)meijiyasuda.co.jp
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