KIBAN株式会社|保険代理店の外部経営管理本部
業界動向

取扱保険会社を減らせば、比較推奨対応は楽になるのか

——問われているのは「何社か」ではなく「なぜその範囲か」

2028年3月1日の改正比較推奨販売規制の施行に向けて、取扱保険会社の整理を検討し始めた乗合代理店もあると思います。取扱会社を減らせば比較する商品も減り、対応は楽になるようにも見えます。しかし、比較推奨対応で問われるのは「何社を扱うか」ではなく、「なぜその範囲なのか」を会社として説明できるかどうかです。本稿では、取扱範囲を経営の判断として考えるための論点を整理します。

「減らせば楽になる」は本当か

2028年3月1日の施行に向けて、比較推奨販売への対応を検討し始めた乗合代理店では、こんな議論が出てくるかもしれません。

「取扱保険会社を減らせば、比較する商品も減る。そうすれば対応は楽になるのではないか」

一理あります。取扱商品が増えれば、そのぶん負担も増えます。商品情報を把握し、募集人を教育し、比較対象を整理し、説明と記録を残さなければならないからです。

では、取扱保険会社を減らせば問題は解決するのでしょうか。私は、そう単純ではないと考えています。

減らしても、問いは残る

仮に、取扱保険会社を3社から2社に減らしたとします。確かに、比較する商品の数は減ります。しかし、「2社のうち、どちらを、なぜ勧めるのか」という問いは残ります。

比較推奨販売への対応で本当に負担になるのは、比較する商品の数そのものではありません。比較と推奨の論理を、会社として持っているかどうかです。その論理がなければ、2社でも説明に困ります。反対に、比較と推奨の論理が整理されていれば、取扱会社が多いこと自体が直ちに問題になるわけでもありません。

先に問うべきは「誰に、何を提供するのか」

取扱範囲を考えるとき、先に問うべきことがあります。自社は、誰に、どのような保険サービスを提供する代理店なのか。

自動車保険を中心とする地域代理店と、企業向けの火災保険や賠償責任保険を扱う代理店とでは、必要な商品も保険会社の範囲も異なります。顧客は個人が中心なのか、法人が中心なのか。標準的な商品を数多く扱うのか、特殊なリスクにも対応するのか。既存契約の更改が中心なのか、新規の提案が多いのか。事業の姿が違えば、ふさわしい乗合の形も変わります。

したがって、考える順番は「何社まで減らせるか」ではありません。「顧客に価値を提供するために、どの商品と保険会社が必要なのか」から考えるべきです。

「売れていない会社を外す」だけでは足りない

販売実績だけで取扱範囲を決めることにも注意が必要です。「あまり売れていないから、この保険会社は外そう」。一見、合理的な判断に見えます。しかし、その会社の商品が特定の顧客層や特殊なリスクに欠かせないのであれば、販売件数だけでは判断できません。

逆に、販売実績が非常に多い保険会社についても、問うべきことがあります。なぜ、その会社の商品を多く勧めているのか。顧客の意向に基づいた結果なのか。それとも、募集人の慣れや社内の慣行によるものなのか。ここを説明できなければ、比較推奨販売の見直しとしては不十分です。

大切なのは、結果として何社を扱っているかではありません。その範囲をなぜ選んだのかを説明できることです。

収益性と推奨理由を、どう切り分けるか

もう一つ、避けて通れない論点があります。代理店経営である以上、収益性を無視して取扱範囲を決めることはできません。一方で、会社としての取扱範囲の判断と、個々の顧客に対する推奨理由とは、明確に切り分けて考える必要があります。取扱範囲の判断と個々の推奨の判断が混ざってしまうと、顧客にとって本当に適した提案なのかを説明できなくなります。

拠点ごとに取扱会社が違う場合

損害保険代理店では、本店と支店、あるいは地域ごとに、実質的な取扱保険会社が異なるケースもあります。この点をどう整理するかは、制度面の議論が今も続いている論点です。ただ、どのような結論になっても、経営として答えを用意しておくべき問いは変わりません。

なぜ、その拠点ではこの会社を扱い、別の拠点では扱わないのか。それは、顧客にとって合理的なのか。会社として、その運用を把握し、管理できているのか。「昔からこうしている」は、答えになりません。

これは、経営の判断である

ここまで見てくると、取扱範囲の問題が単なる募集ルールの問題ではないことが分かります。取扱保険会社を増やすのか、減らすのか、維持するのか。どの商品群を重点的に扱うのか。どこまでの商品知識を社内で維持し、そのためにどれだけ教育コストをかけるのか。その体制で、十分な収益を確保できるのか。

いずれも、代理店の事業戦略そのものです。コンプライアンス部門だけで決められる問題ではありません。

自社は、誰に、何を提供する代理店なのか

比較推奨販売への対応を考えると、取扱保険会社を整理する代理店は、今後増えるかもしれません。それも一つの合理的な選択です。反対に、あえて取扱範囲を維持する、あるいは広げるという選択もあり得ます。

どちらを選ぶにしても、起点は同じです。自社は、誰に、何を提供する代理店なのか。その答えから逆算して、今の取扱範囲を説明できるでしょうか。説明できないところがあるなら、そこが見直しの出発点です。

関連コラム:改正の全体像と経営が決めるべき論点は「比較推奨販売対応は「募集モデル」の再設計である」を、ハ方式廃止の意味は「「ハ方式廃止」で本当に変わるものは何か」をご覧ください。

「今の取扱範囲を、なぜこの範囲なのかと問われたら説明できるか」

そこが気になった段階でも構いません。取扱保険会社と商品群、拠点ごとの運用の棚卸しから、経営として決めるべき論点の優先順位まで、KIBANの30分無料相談で一緒に整理します。

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よくある質問

販売実績の少ない保険会社は、取扱いをやめたほうがよいですか

販売実績だけでは判断できません。本文で述べたとおり、その保険会社の商品が特定の顧客層や特殊なリスクに欠かせないのであれば、件数が少なくても取り扱う意味があります。反対に、実績が多い保険会社についても、それが顧客の意向に基づいた結果なのかを確認しておくことが大切です。

取扱範囲の見直しは、誰が決めるべきですか

経営が決めるべきことです。取扱保険会社を増やすのか減らすのか、どの商品群を重点的に扱い、どこまで教育コストをかけ、その体制で収益を確保できるのかは、代理店の事業戦略そのものです。コンプライアンス部門の意見を踏まえつつ、最終的には経営として判断し、その理由を説明できるようにしておく必要があります。

手数料水準の高い保険会社を中心に勧めることは問題になりますか

個々のお客さまへの推奨を手数料で決めることは問題になります。パブコメ回答では、手数料水準、販売目標、保険会社からの便宜供与等の代理店側の都合により、特定の保険会社や保険契約へ誘導することは適切ではないとされています。本文で述べたとおり、会社としての取扱範囲の判断に収益性が関わるとしても、個々の推奨理由はお客さまの意向に沿ったものである必要があり、両者を切り分けて説明できる状態にしておくことが大切です。

取扱保険会社は何社くらいが適正ですか

何社が適正かという決まった答えはありません。取扱会社が多ければ商品把握や教育の負担は増え、少なければ顧客層やリスクに対応しきれなくなるおそれがあります。本文で述べたとおり、自社が誰に何を提供する代理店なのかを起点に、今の範囲を説明できるかどうかで判断することになります。

まとめ——KIBANからの提言

取扱保険会社を減らすことも、維持することも、広げることも、それ自体に正解・不正解はありません。問われるのは、自社が誰に何を提供する代理店なのかを起点に、今の取扱範囲を説明できるかどうかです。取扱範囲の見直しは募集人の教育や顧客への対応にも関わるため、施行直前ではなく早い段階から検討しておくことが望まれます。

KIBANは保険代理店の「外部経営管理本部」として、代理店自身が進める取扱範囲の棚卸しや募集方針の整理を、実務経験をもとにお手伝いしています。個別の法的判断が必要な場面では、弁護士などの専門家と連携して対応します。

参照した主な情報源

  • 金融庁「令和7年保険業法改正に係る内閣府令及び『保険会社向けの総合的な監督指針』等の一部改正(案)に対するパブリックコメントの結果等の公表について」(2026年8月28日) 公表ページ
  • 同 別紙1「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」 PDF
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