2026年、乗合代理店の比較推奨販売をめぐるルールの大きな転換が正式に決まった。これまで認められてきた、代理店独自の経営方針や事情によって特定の保険会社の商品を絞り込み、その理由を顧客に説明して推奨する、いわゆる「ハ方式」を認めない新たなルールが公布され、改正後の内閣府令・監督指針は2028年3月1日に施行・適用されることとなった。一見すると、顧客本位の業務運営を強化するための当然の改正にも見える。しかし、この改正の意味を理解するためには、そもそもなぜハ方式が認められていたのかを考える必要がある。そこをたどっていくと、単なる募集ルールの変更ではなく、保険代理店という存在を制度がどう捉えてきたのかという、もっと根本的な変化が見えてくる。本稿の目的は、2013年の金融審議会における制度設計の議論から2026年の改正公表に至る13年間を一次資料に基づき跡付け、プリンシパル・エージェント理論の枠組みを用いて、保険代理店の法的地位(誰から委託を受け、どのような立場で募集を行うのか)と行為規範(何を起点に商品を選択・推奨すべきか)との間に生じた緊張関係―乖離(かいり)とも見えるその関係―を論じることにある。
先行研究では、2014年保険業法改正を契機として、乗合代理店の比較推奨販売、意向把握義務、情報提供義務、体制整備義務、所属保険会社との責任関係などについて多くの検討が行われてきた。栗山泰史氏は、新たな募集規制の意義を「対話をベースにした保険募集の開始」「代理店経営の高度化」「乗合代理店による比較推奨販売の本格実施」の3点に整理している(注1)。安田和弘氏は、乗合代理店の推奨理由という主観的事情まで情報提供の対象とする規制の新規性を、他の金融商品の販売主体に課された義務との対比から指摘している(注2)。山本啓太氏は、意向把握義務と推奨販売における顧客意向との関係を検討し(注3)、遠山聡氏は、独立的な立場で保険募集業務を行う大規模乗合代理店と所属保険会社の責任との関係を論じている(注4)。これらの先行研究は、本稿が扱う問題の重要な基礎を提供するものである。
一方、筆者が確認した限り、ハ方式の生成から廃止に至る制度変化を一つの連続した過程として捉え、保険代理店の法的地位が大きく変わらない一方で、商品選択・推奨における行為規範が顧客利益をより重視する方向へ変化してきたことを、保険代理店固有の経営管理問題として位置付けた研究は見当たらない。
そこで本稿では、まず2013年以降の制度変化を一次資料に基づいて跡付ける。そのうえで、プリンシパル・エージェント理論を補助的な分析枠組みとして用いながら、法的地位と行為規範の間に生じた緊張関係が、代理店内部にどのような経営管理上の課題をもたらすのかを考察する。
出発点となるのは、保険代理店の法的な立場である。2013年、金融審議会「保険商品・サービスの提供等の在り方に関するワーキング・グループ」では、乗合代理店の位置付けについてかなり明確な整理が行われた。第9回会合(2013年1月30日)で金融庁事務局は、顧客と保険会社との間で「公平・中立」であることについて、保険会社側の継続的な代理人であるという乗合代理店の法的立場との両立は、どう考えても困難であると説明している。第14回会合(2013年4月19日)でも金融庁事務局は、法律上の乗合代理店の位置づけは、あくまでも保険会社側の代理店であり、保険仲立人のような「公平・中立」な仲介者として法的に位置付けられているわけではないと説明している。複数の保険会社の商品を取り扱うからといって、乗合代理店が顧客の代理人になるわけではない。A社、B社、C社と代理店契約を締結していたとしても、その基本的な法的性格は、それぞれの保険会社から委託を受ける募集主体である。つまり2013年当時、制度設計者はすでに、保険会社から委託を受ける募集主体でありながら、顧客の意向を起点として複数社の商品を比較・推奨するとはどういうことなのかという問題を認識していたのである。この問題意識の背景には、来店型保険ショップをはじめとする新しいタイプの乗合代理店の拡大があった。金融庁は当時、乗合代理店の中に「公平・中立」を標榜し、複数の保険会社の商品から顧客ニーズに合うものを販売することによって支持を集める事業者が存在すると指摘している。顧客からすれば、複数の商品を扱っているなら自分に合った商品を選んでくれるのだろうと考えるのが自然である一方、法律上その代理店は顧客の代理人ではない。ここに顧客の期待と法的地位とのギャップが生じ、金融審議会は、乗合代理店に対して保険会社側の代理店であるという立場を顧客に説明させる一方、実際に比較販売を行うのであれば、その比較・推奨行為について追加的なルールを設けるという方向を選んだ。
この問題は、経営学・制度経済学におけるプリンシパル・エージェント理論の枠組み(注5)で捉えると見通しがよくなる(なお、本稿における「エージェント」はプリンシパル・エージェント理論上の概念であり、保険業法・民法上の「代理人」と同一の概念ではない)。エージェント(=乗合代理店)が単一のプリンシパル(依頼人=所属保険会社)の利益のために行動する限りにおいては、情報の非対称性の下でエージェントが依頼人の利益をどこまで追求するかという、通常のエージェンシー問題として整理できる。乗合代理店は、複数の所属保険会社からそれぞれ独立に委託を受けるという意味で、一人のエージェントが複数のプリンシパルとの関係を同時に有する、いわゆるマルチプリンシパル問題(multi-principal agency problem)に近い構造を持つ。さらに、そこに法的なプリンシパルではない顧客からの期待が重なる。現実には、顧客もまた「自分のために動いてほしい」という期待を代理店に向けるからである。2013年の金融審議会が示した「乗合代理店は顧客の代理人ではない」という整理は、少なくとも法制度上、顧客を代理店に権限を委譲するプリンシパルとして構成する制度は採らなかったことを意味する。
ここが、ハ方式を理解するうえで最も重要なポイントである。2013年の制度設計は、乗合代理店になった以上、必ず顧客ニーズに基づいて複数社の商品を比較しなければならないとはしなかった。第11回会合(2013年3月1日)に金融庁事務局が提出した論点資料では、複数の商品を比較して特定商品を推奨する場合の規律に加えて、比較推奨を基本としない販売形態―特定の商品群だけを提示し、その理由を説明するという形態―が明示的に示されており、その理由については、特定の保険会社との資本関係や、事務手続・経営方針上の理由であっても認められるという整理がなされている。これは後のハ方式につながる考え方である。つまり、当時の制度は二つのビジネスモデルを許容した。一つは、顧客ニーズを把握したうえで複数商品を比較し、絞り込んで推奨するという比較推奨型。もう一つは、代理店自身の資本関係、事務手続、経営方針等によって取扱商品を絞り、その理由を顧客に説明するという代理店方針型である。これは制度上の偶然ではない。2013年の金融審議会が、乗合代理店をあくまで「保険会社側の代理店」と位置付けていたことを考えれば、一定の合理性がある。保険会社側の代理店なのだから、自らの経営方針等により特定の商品を中心に取り扱うことまで一律に禁止する必要はない。ただし、顧客に「あなたに最適な商品を選んでいる」と誤認させてはいけない。だから、なぜその商品を提示するのかを説明させるという規制にしたのである。比較推奨販売に関する具体的なルール(イ・ロ・ハの3方式)自体は、後述する2014年の保険業法改正に伴う施行規則改正によって導入されたものだが、その骨格をなす考え方は、既に2013年の審議段階で示されていた。
この点は、現在から過去を振り返ると誤解しやすい。2025年5月14日の衆議院財務金融委員会において、岡田悟委員(立憲民主党)は、比較推奨販売のルールについて、非常に例外的なルールとして設けられたにもかかわらず、広く大手の乗合代理店にある種悪用されてきたと評した。これに対し金融庁の伊藤豊監督局長は、ハ方式を廃止すれば顧客意向を起点とする「原則に戻る」こととなり、まず顧客が保険契約において何を重視するかを確認したうえで、商品を絞り込むことになる旨を答弁している。
ここで整理を一段慎重にしておく必要がある。2025年の国会審議では、質問者からハ方式を「非常に例外的なルール」と評価する指摘がなされ、これに対して金融庁も、ハ方式廃止後の顧客意向を起点とする販売方法について「原則に戻る」と答弁した。もっとも、金融庁がハ方式について「制度創設時から例外措置であった」と説明したものではない。両者を混同しないことが重要である。制度創設時(2013年)の金融審議会資料を確認する限り、ハ方式の原型を「時限措置」「暫定措置」「例外的措置」と明示的に位置付けた記述は見当たらない。むしろ、第11回会合の資料は、比較推奨型の代理店と、比較推奨を基本としない代理店の双方を、対等な選択肢として明示的に想定していた。なお、制度導入前後の実務的評価として、栗山泰史氏は後のハ方式につながる仕組みを「実務に即したある種の特例」と評している(注6)。ただし、これは制度の性格に関する論者の評価であり、制度創設時の金融審議会が当該方式を時限的・暫定的措置として位置付けていたことを示すものではない。したがって、次のように整理するのが正確だろう。2025年の国会審議では「原則(顧客意向起点)に戻る」という評価が政府答弁として示された一方、これは2013年当初からハ方式が例外措置として設けられていたことを意味しない。「2025年から見た評価」と「2013年の制度創設時の事実」を混同しないこと自体が、本稿の分析上の要点の一つである。
こうした議論を受け、2014年5月23日に成立し同月30日に公布された「保険業法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第45号)により、募集規制の大きな転換が行われた。同法の募集規制に関する部分は2016年5月29日に施行された。保険業法294条の2によって、保険募集人には顧客の意向を把握し、それに沿った提案を行う義務(意向把握・確認義務)が設けられた。また294条の3では、募集人自身に募集業務を適切に行うための体制整備義務が課された。比較推奨販売に関する具体的なルール(保険業法施行規則第227条の2第3項第4号イ・ロ・ハ、保険会社向けの総合的な監督指針Ⅱ―4―2―9(5))は、この2014年改正に伴う施行規則改正によって導入された。ロ方式は、顧客の意向に沿って商品を選別し、その概要と提案理由を説明するもの。ハ方式は、商品特性や保険料水準などの客観的基準によらず商品を絞り込み・提示する場合に、その提案理由のみを説明すればよいとするものである。ここで重要なのは、従来のように保険会社が代理店を管理すればよいという仕組みだけではなくなったことである。とりわけ、大規模な乗合代理店や、独自の比較推奨プロセスを構築する代理店については、自ら募集プロセスを管理する責任があるとの考え方が強まった。ただし、この段階でもハ方式は残った。つまり制度は、顧客意向に沿った提案義務と、代理店自身の経営方針等による商品絞込みを、一定の説明の下で併存させていたのである。
この仕組みが大きく揺らいだのが、2023年から2024年にかけてである。一つは、保険業界で相次いだ不祥事である。金融審議会「損害保険業等に関する制度等ワーキング・グループ」第4回会合(2024年11月15日)で金融庁事務局は、従来制度について、便宜供与の実績等の理由により当該損害保険会社の商品を推奨することを決定していたとしても、顧客に対して仮に推奨理由を適切に説明していたとするならば、現状の制度においては直ちに法令に違反するものではない、と説明している。この説明は非常に重い。従来のハ方式では、なぜA社を推奨するのかについて代理店側の理由を説明すればよかった。しかし、その「代理店側の理由」の中に、保険会社からの便宜供与、本業支援、各種の経済的利益、その他代理店と保険会社との取引関係が入り込めば、顧客の商品選択が歪められる可能性がある。一連の不祥事によって、この利益相反が現実の問題として顕在化した。もう一つが、金融サービス提供法2条である。金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律2条1項の「顧客等の最善の利益を勘案した誠実公正義務」は、令和5年法律第79号(2023年11月20日成立、同月29日公布)により新設され、誠実公正義務に係る規定は2024年11月1日に施行された。この規定は、保険代理店の比較推奨問題を解決するために作られたものではない。その源流は、資産運用・金融商品販売を中心として進められてきた「顧客本位の業務運営」にある。それを金融事業者全般に横断的な法的義務として位置付けた結果、保険募集人にも適用されることになった。つまり、ハ方式の歴史と最善利益義務の歴史は、もともとは別の流れなのである。ところが2024年、この二つが交差した。同じ第4回WG(2024年11月15日)で金融庁事務局は、新しい金融サービス提供法が施行され、保険募集人を含む金融事業者に顧客の最善利益を勘案する義務が課されたことを踏まえ、保険会社による便宜供与の実績に応じて商品を推奨することは、顧客の最善の利益に資する対応とはなっていないのではないかという問題意識を明確に示している。ここで、2013年に成立した制度上の均衡が崩れ始めた。
2013年のルールは、ある意味で「透明性」による規制だった。代理店自身の事情で商品を選んでもよいが、そのことを顧客にきちんと説明する。これによって顧客の誤認を防ぐという発想である。ところが不祥事を通じて、説明してさえいれば代理店の利益によって商品推奨が歪んでもよいのかという問題が顕在化した。そこに金サ法2条の「顧客の最善の利益を勘案する」という横断的な行為規範が加わった。その結果、2024年12月25日に取りまとめられた同ワーキング・グループの報告書は、今後の方向性として、顧客の意向に沿って商品を絞り込むこと、さらにその際には顧客が重視する項目を丁寧かつ明確に把握したうえで商品を推奨することを求める方向を示した。これは、代理店都合で選ぶこともできるが理由を説明するという従来のハ方式とは異なり、商品を選ぶ出発点そのものを顧客意向に置くという思想への転換である。こうした議論を経て、2025年5月30日に成立した改正保険業法(令和7年法律第54号)のもとで検討が進み、2026年8月28日、金融庁は比較推奨販売に係る内閣府令及び監督指針等の改正について、パブリックコメントの結果を公表した。改正後の内閣府令・監督指針の施行・適用日は2028年3月1日である。したがって、2026年9月現在、ハ方式は既に法的に消滅したという表現は正確ではない。正しくは、ハ方式を認めない制度への転換が正式に決まり、2028年3月1日の施行・適用に向けた移行期間に入ったということである。またハ方式の廃止を、金サ法2条によって自動的に違法になったと理解するのも正確ではない。直接的には、保険業法体系における比較推奨ルールを改めたものである。しかし、その背景には、一連の不祥事による利益相反の顕在化と、金融サービス提供法2条による最善利益を勘案した誠実公正義務があった。したがって因果関係は、不祥事がハ方式の問題を顕在化させ、金サ法2条が従来のハ方式を維持しにくくする新たな行為規範を与え、最終的に保険募集規制そのものが改められた、と整理するのが適切だろう。
改めて2013年と2028年3月1日以降の姿を比べてみたい。2013年には、乗合代理店は保険会社側の代理店であり、顧客と保険会社との間で公平・中立であるとはいえない。それでも比較販売を行うのであれば比較の範囲や推奨理由を説明し、比較販売を行わないのであれば資本関係や経営方針など自社の事情で商品を選ぶことも認める。これが制度の出発点だった。それが2028年3月1日以降には、顧客が何を重視するのかを把握し、その意向に沿って商品を絞り込み、その理由を説明し、そのプロセスが適切に機能しているかを代理店自身が管理するという姿に変わる。法的な立ち位置は大きく変わっていない。それでも、募集において求められる行動は明らかに顧客側へ動いている。ここに、現在の乗合代理店制度の最も興味深い二重性がある。保険代理店は、今でも顧客の代理人ではなく、保険仲立人になったわけでもない。しかし、複数社の商品を取り扱い、その中から商品を選んで顧客に推奨する場面では、自社や所属保険会社の事情ではなく、顧客の意向を起点に判断することが求められるようになった。つまり、「誰から委託を受け、どのような立場で募集を行うのか」という法的地位と、「誰の利益を勘案して商品を選ぶのか」という行為規範が、必ずしも同じ方向を向いていない。これは法的な矛盾とはいえない。代理関係と、金融規制上の行為義務は別だからである。しかし、両者の間に強い緊張関係が存在することは否定できず、ハ方式は、その緊張関係の中で、代理店側の事情による商品選択に一定の裁量余地を認める仕組みだったとも考えられる。
ここから、保険代理店経営に固有の課題を一つの命題として示すことができる。すなわち、保険代理店経営に固有の課題は、所属保険会社との委託関係から生じる要請と、顧客利益を起点とする行為規範を、同一の組織の中で整合的に管理しなければならない点にある。この二重の要請を調整する仕組みが、代理店ガバナンスであり、募集管理態勢であり、経営管理機能なのである。
この緊張関係は、第2章で示したマルチプリンシパル問題として捉え直すとより明確になる。乗合代理店は、法的には複数の保険会社からそれぞれ委託を受ける立場にあり、プリンシパル・エージェント理論上は、複数保険会社という複数のプリンシパルとの関係を有するエージェントとして捉えることができる。金サ法2条以降の行為規範は、顧客を法的なプリンシパルに転化させるものではない。しかし、商品選択・推奨に際して顧客利益を独立した規範的制約として代理店の意思決定に組み込むことを要求している。この結果、乗合代理店の意思決定構造は、複数の所属保険会社とのエージェンシー関係だけでは説明し切れないものとなった。ハ方式は、代理店自身の利益や所属保険会社との取引関係が商品選択に入り込む裁量余地を、理由説明義務によって限定的に統制する仕組みだったと言える。2026年の改正は、この裁量余地の許容範囲を実質的に縮小する制度転換だと理解できる。
そう考えると、今回の改正は単なる「不適切な販売手法の禁止」ではない。2013年の制度は、保険会社側の代理人という法的性格を維持しながら、代理店自身の経営方針による商品選択にも一定の余地を残した。ハ方式は、その一つの表れだった。ところが13年後、その余地を閉じる方向への制度転換が決まった。乗合代理店が商品を選んで推奨するのであれば、その判断の出発点は代理店ではなく顧客に置く。ここから見えてくる「代理店の自立」は、保険会社との関係を断つことではない。むしろ、所属保険会社との関係を持ちながらも、自社として顧客意向を把握し、比較推奨の基準を定め、利益相反を管理し、募集実態を検証し、問題があれば自社として改善する、そうした自律的な経営管理能力を持つことが求められている。2013年の比較推奨規制は、「公平・中立」を標榜する新しい乗合代理店への規制から始まったが、13年を経て、比較推奨は一部の保険ショップだけの問題ではなくなった。今や、乗合代理店自身が、自分たちはどのような基準で顧客に商品を勧める会社なのかを経営として定義し、その適切性を説明・検証することが求められている。ハ方式が生まれ、そしてその廃止が決まった13年間は、保険代理店が「保険会社の販売チャネル」という法的・制度的な位置付けを残しながらも、自らの募集判断とその管理について、より強い責任を負う経営主体へと変化してきた13年間だったのではないだろうか。
この転換が代理店経営に突きつける課題は明確である。顧客意向の把握、比較・絞り込みの基準策定、その運用の記録・検証、利益相反の管理―これらはいずれも、対外的な説明責任を伴う恒常的な管理機能であり、一度構築すれば終わりというものではない。とりわけ中小規模の乗合代理店では、こうした機能をすべて内部保有するのか、一部を共同化・外部化するのかという「経営管理機能の調達設計」も、新たな経営課題となる。
ハ方式廃止という一つの規制転換は、「経営管理そのものが競争優位となり得る」という命題を、比較推奨という具体的な募集実務の場面から浮かび上がらせている。今回の制度改正への対応は、単なる募集手順の変更にとどまらない。保険代理店が、自らの判断基準を定め、その適切性を説明し、検証し、改善する経営主体となれるか。そのこと自体が問われているのである。