保険代理店業界は、長らく「募集」と「手数料」を軸とした事業として語られてきた。しかし、保険会社との手数料制度、規制産業としての制約、顧客と保険会社という二面市場への同時対応、そして自社で商品を設計できないという構造的特徴を踏まえれば、保険代理店の競争優位を決定づけるのは営業力そのものではなく、これらの制約条件のもとでいかに組織を設計し、運営し、統制するかという「経営管理」の巧拙である。一般の経営学において経営管理は多くの場合、事業を支える支援機能として位置づけられてきた。しかし保険代理店においては、経営管理そのものが売上を左右し、企業価値を形成し、事業の存続可能性を決定する中核機能となる。この認識に立ち、保険代理店という業態に固有の経営管理論を体系化する学術的営みを、ここに「保険代理店経営学」と名付ける。本研究所は、この保険代理店経営学を継続的に研究・体系化し、その成果を実務に還元することを目的として設立する。
保険代理店経営学は、これまで学術的な空白地帯であった。保険業法や保険会社側の視点からの研究は蓄積されてきた一方、代理店経営そのものを経営学の対象として体系的に扱う研究は乏しい。この空白を埋めるには、単発の論考や実務家の経験則だけでは不十分である。継続的にテーマを設定し、理論を積み上げ、実務での検証を経てフィードバックする、という研究機関としての恒常的な機能が必要である。本研究所は、その役割を担う。
本研究所の最大の特徴は、研究のための研究にとどまらない点にある。KIBAN株式会社が実際に手がける外部経営管理支援・外部監査といった実務の現場で得られる知見を理論化し、体系だった経営学として言語化する。同時に、研究所で構築した理論的フレームワークを実務の設計(評価制度、監査基準、組織モデルなど)に反映させ、検証する。この研究と実務の往還を通じて、保険代理店経営学は机上の理論ではなく、現場で実効性を持つ応用経営学として進化を続ける。
本研究所は、以下の五つの領域を柱として研究を進める。一、総論・基礎理論(保険代理店経営学とは何か、なぜこの業態に固有の経営学が必要か)。二、経営管理・組織・人材(経営管理人材の希少性とキャリアパス、組織コミットメントのあり方、大型化とガバナンスの限界)。三、制度・法務(手数料制度、募集規制、再委託規制と経営管理の関係)。四、企業価値・M&A・資本(代理店の企業価値評価、M&A・PMIと資本戦略)。五、未来・エコシステム(外部経営管理本部という新しい経営資源、業界の未来像)。
保険代理店経営学を、保険代理店経営に携わるすべての者にとっての共通言語とすること。そして、その共通言語を通じて、業界全体の経営水準の底上げに貢献すること。これが本研究所の目指す姿である。KIBAN株式会社は、この研究機関としての機能を自らの内に持つことで、実務支援の提供者であると同時に、業界の知的基盤を担う存在でありたいと考える。
2026年7月25日
KIBAN株式会社
代表取締役 花岡 慎