自己点検の証跡(エビデンス)の作り方
——何をどこまで残すべきか
自己点検の対応で最も時間がかかるのが、証跡(エビデンス)の準備です。「やっている」ことを「確認できる」状態にする——本コラムでは、証跡づくりの実務を、領域別の具体例と「続く仕組み」のつくり方まで整理します。
証跡とは何か
証跡とは、規程で定めた業務が実際に行われたことを示す記録のことです。自己点検の各項目は、突き詰めると次の三段階で構成されています。
- 規程:ルールが文書として存在するか
- 運用:ルール通りに業務が行われているか
- 記録:行われたことを後から確認できるか
このうち保険会社との対話で問われるのは主に「規程」と「記録」です。運用の実態は、記録を通じてしか確認できないためです。
領域別・最低限そろえるべき証跡
どこまで残せばよいか迷ったら、領域ごとに「最低限これがあれば機能する」という水準を押さえましょう。
- 教育関連:実施日、参加者、テーマ・内容の3点セット。研修資料が残っていればベターですが、必須ではありません。月1回の朝礼教育なら、年12件の記録が目安になります。
- 会議・報告関連:経営会議やコンプライアンス関連の打ち合わせは、簡単な議事メモを残します。A4半分程度の分量で十分です。「開催した事実」と「何を決めたか」が分かれば機能します。
- 点検・チェック関連:募集書類の点検や口座管理のチェックなど、定期的な確認業務はチェック表を使います。日付と確認者印(またはサイン)があるだけで、証跡としての価値が生まれます。
- 顧客対応関連:意向把握帳票、重要事項説明の記録、苦情対応の記録。これらは保険会社の様式・システムで残っていることが多いので、「どこにあるか」を把握しておくことが実質的な準備になります。
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「さかのぼって作る」はどこまで許されるか
期限直前によくある質問ですが、原則として、記録は業務と同時に作られるべきものです。実施していない教育の記録を作ることは虚偽記載となってしまうため、厳に避けなければなりません。
一方で、「実施したが記録していなかった」業務について、記憶と資料に基づいて事後的に記録を整理すること自体は、実態を反映している限り虚偽ではありません。ただし作成日は正直に記載すべきで、過去の日付を偽装するのは避けるべきです。
このグレーゾーンに悩むくらいなら、今日から記録を始めるのが最も確実です。9月の点検で「7月から記録があります」と言える状態は、何もないより遥かに良い状態です。
記録を「続く仕組み」にする
証跡づくりが続かない最大の原因は、様式が重すぎることです。議事録に1時間かかる様式は必ず形骸化します。続けるコツは3つです。
- 様式は1枚以内にする
- 記入項目は5個以内にする
- 保存場所を1箇所に決める(紙ならファイル1冊、データならフォルダ1つ)
ポイント:日常の記録が整えば、自己点検は「一年分の記録を確認する作業」になり、負担は大幅に減ります。証跡づくりは、点検対策であると同時に、日常業務を軽くする投資でもあります。
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