自己点検、締切まで残り2か月。
60日で終わらせる実務ロードマップ
損害保険協会の自己点検チェックは、9月末までの回答報告が推奨時期とされています。8月に入った今、残された時間はおよそ60日です。172項目という分量に身構えてしまいがちですが、実務で時間がかかるのはシートを埋める作業ではありません。「回答したい。けれど、裏づける記録が手元にない」——この項目をどう埋めるかに、大半の時間が消えます。本コラムでは、残り60日を3つのフェーズに分け、何をいつまでに終わらせるべきかを整理します。
目次
なぜ「残り60日」が実質のリミットなのか
9月末という時期が示されているのは、提出そのものが目的だからではありません。手引きでは、所属保険会社との「対話」に十分な時間を確保するために、9月末までの回答報告が推奨されています。つまり9月末は締切ではなく、対話の入り口です。
そのうえで2026年度版は、回答形式が従来の「はい/いいえ/対象外」の3択から、「取り組んでおり、課題はない」「取り組んでいるが、課題がある」「取り組んでいない」等の5択に変わりました。自店の課題を自ら発見する設計になっている以上、回答には根拠が要ります。「課題はない」と答えた項目は、対話の場でその裏づけを示さなければなりません。
60日の使い方は、ここから逆算して決まります。シートを読む時間ではなく、記録を揃える時間をどれだけ確保できるか。これが実質のリミットの正体です。
関連コラム:制度の全体像は「保険代理店の自己点検とは?」、提出先の仕組みと実務の注意点は「代理店登録等の共通プラットフォーム(登録PF)とは?」で解説しています。
60日を3つのフェーズに分ける
8月1日を起点にすると、9月末までは約60日。次のように配分します。
全項目に目を通し、不足している箇所を洗い出して数える。
規程を整え、記録の残る業務を実施する。
回答の整合を確認し、提出して対話に備える。
補修フェーズに最も長い日数を割いているのは、この期間だけが「日程を押さえなければ実行できない作業」を含むためです。書けば終わる作業は後ろに寄せられますが、実施しなければ生まれない記録は、後ろに寄せられません。
Day 1–20|棚卸——172項目を3列に仕分ける
最初の20日は、答えを埋める期間ではありません。答えられない項目を特定する期間です。172項目を、次の3列で仕分けます。
社内規則・マニュアル等の文書が存在するか。
文書のとおりに、実際の業務が回っているか。
運用の事実を示す議事録・実施記録・帳票があるか。
3列すべてが埋まる項目は、その場で回答を確定させて手を離します。どこかが欠けている項目だけを残し、担当者と期限を割り当てます。ここで残った項目数が、そのまま残り40日の作業量です。
多くの代理店では、①規程はあるが③記録がない、という形に偏ります。規程は整っているのに、それを運用した証拠が残っていない。この偏りが見えた時点で、後半の打ち手は決まります。
この段階で「取り組んでいるが、課題がある」を選ぶ判断を、恐れる必要はありません。課題の申告は減点ではなく、5択という設計が想定している回答です。
まず、自社に不足している項目を数えるところから。
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Day 21–45|補修——時間がかかるのは「これから作る記録」
このフェーズで最も時間を要するのは、文書を書く作業ではありません。これから実施して、記録を作る類の項目です。募集人向けの研修、経営レベルでの方針決議、内部点検の実施——いずれも実施日を確保しなければ、記録そのものが生まれません。
したがって、この25日間は日程の確保から始めます。
- 実施が必要な行事(研修・会議・点検)の日程を、8月中にすべて確定させる。9月に入ってから空き日を探すと、まず日程が入れられません。
- 規程の改定は、承認プロセス(経営会議・取締役会等)の開催日から逆算する。改定案の完成日ではなく、承認日が期限です。
- 過去に実施したはずだが記録がないものは、遡って作らない。直近の実施分から記録を整え、運用を改めた事実として説明します。
3点目は重要です。実施していない事実を、記録で作ることはできません。「以前から適切に実施していた」と装うより、「この時期から記録を残す運用に改めた」という現在進行形の説明のほうが、対話では適切です。
Day 46–60|検証——回答の整合と、対話の準備
最後の15日は、新しい作業をしない期間として空けておきます。ここで着手する作業が残っていると、確認そのものができなくなります。
- 全項目の回答を通しで読み返し、項目間で矛盾していないかを確認する。
- 「課題はない」と回答した項目について、裏づけ資料を今この場で提示できるかを確認する。
- 証跡の所在一覧(どの資料が、どこに、誰の手元にあるか)を1枚にまとめる。
- 乗合会社を含むすべての所属保険会社への報告に、漏れがないかを確認する。
- 9月末を待たずに提出し、対話の日程調整に入る。
証跡の所在一覧は、手引きで求められているものではありません。それでも対話の場では必要となります。「あります」と答えてから探し始めるのと、その場で示すのとでは、態勢整備の受け取られ方が変わります。
60日で落ちやすい5つの穴
172項目すべてに課題がないという回答は、点検が機能していないという印象を与えかねません。
担当者個人のPCやメールの中にあり、当日その場で取り出せない。
開業時の雛形のまま更新されておらず、現在の組織体制と合っていない。
現場の運用実態と回答が食い違う、最も典型的な原因です。
報告の相手は代申会社だけではありません。乗合各社への報告を含めて数えます。
よくある質問
今から始めて、2か月で間に合いますか。
172項目を読み通す作業自体は、数日で終わります。間に合うかどうかを決めるのは、不足している記録の量です。まず最初の20日で棚卸を終え、残り作業を数えてください。作業量が確定して初めて、自社だけで回すか、外部の支援を入れるかの判断ができます。
9月末を過ぎると、どうなりますか。
9月末は推奨時期であり、その趣旨は所属保険会社との対話の時間を確保することにあります。報告が遅れるほど対話の日程は窮屈になり、指摘を受けてから対応する期間も短くなります。個別の取扱いは、所属保険会社からの案内をご確認ください。
「取り組んでいない」と正直に回答すると、不利になりませんか。
5択への変更は、課題の有無まで含めて自ら申告することを求める設計です。実態と異なる回答は、対話の場で裏づけを示せず、かえって回答全体の整合性を問われることになります。
まとめ
残り60日でやるべきことは、172項目を埋めることではありません。埋めた回答を、説明できる状態にすることです。
最初の20日で不足を数え、次の25日で作り、最後の15日で確かめる。この順番さえ崩さなければ、9月末は十分に間に合います。逆に、棚卸を飛ばして埋められる項目から手をつけると、9月の終わりに「残ったのは、最も時間のかかる項目だけ」という状態になります。
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残り60日。棚卸から対話の準備まで、伴走します。
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