KIBAN株式会社|保険代理店の外部経営管理本部
業界動向

代理店は11.5%減った。しかし募集人は2.4%しか減っていない
——2025年度損害保険代理店統計が示す「気づけば大きくなっていた代理店」

規模の拡大は、経営判断の結果とは限らない

2026年8月7日、日本損害保険協会は2025年度(2026年3月末時点)の損害保険代理店統計を公表しました。代理店実在数は124,024店。1年間で16,114店、率にして11.5%の減少です。前年度の減少率は7.0%でしたから、減少ペースは明らかに加速しています。しかし、この統計で本当に読むべき数字は「11.5%減」ではありません。本コラムでは、代理店数と募集従事者数の減少率の"差"に注目し、この統計が代理店経営者に何を突きつけているのかを整理します。

統計の概要——主要な数字

日本損害保険協会「2025年度損害保険代理店統計」(2026年8月7日公表)の主要な数字は次のとおりです。

2025年度損害保険代理店統計 主要数値
項目2025年度末前年度末増減
代理店実在数124,024店140,138店▲16,114店(▲11.5%)
募集従事者数1,736,427人1,779,201人▲42,774人(▲2.4%)
新設代理店3,149店前年度比▲27.3%
廃止代理店19,263店前年度比+29.7%

構成比で見ると、専業は18.1%(22,502店)・副業81.9%、法人63.6%・個人36.4%、専属76.9%・乗合23.1%。チャネル別では自動車関連業が56.4%と過半を占め、専業代理店は17.6%です。地域別では全都道府県で減少し、最多の東京都でも12,292店(前年比12.2%減)となりました。

出典:日本損害保険協会「2025年度損害保険代理店統計」(2026年8月7日公表・PDF) 掲載元:損保協会お知らせ一覧(2026年度)

核心は「減少率の差」——店は減ったが、人は残っている

代理店数は11.5%減。ところが募集従事者数は2.4%減にとどまっています。この差が、本統計の核心です。1店あたりの募集従事者数を計算すると——

前年度末:約12.7人 → 今年度末:約14.0人(1年で約10%増)
※当社計算

つまり、市場から人が退出しているのではなく、店が畳まれて、人が残っているのです。廃止された19,263店に所属していた募集人の相当数が、他の代理店に吸収されたと考えられます(副業代理店の廃止に伴い募集業務から離れた人も含まれます)。ここから導かれるのは、次の構造です。

POINT

いま起きているのは単なる「代理店の減少」ではなく、「代理店の集約」です。そして集約の受け皿になっている代理店では、自ら規模拡大を選んだわけではないのに、組織が大きくなっていく——採用したつもりはないのに人が増え、統合したつもりはないのに顧客と契約が増える。規模の拡大が、経営判断の結果ではなく、市場構造の帰結として起きています。

規模の拡大を自ら選んだ会社は、通常、それに先立って管理職を置き、規程を整え、管理部門をつくります。しかし「気づけば大きくなっていた」会社には、その準備期間がありません。組織の規模に、管理の態勢が追いついていない代理店が、毎年一定数生まれ続けている——統計の数字は、そのことを示唆しています。

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新設3,149店・廃止19,263店——入口と出口が逆方向に動いた

もうひとつ注目すべきは、新設と廃止の比率です。新設3,149店(前年度比27.3%減)に対し、廃止19,263店(同29.7%増)。入口が急に狭くなり、出口が大きく開いた——両者が同時に、逆方向に動きました。

本統計の別紙(2016年度以降の時系列)で見ると、廃止19,263店は、この10年で最多だった2017年度(19,418店)に迫る水準です。一方の新設3,149店は、同期間で最少。過去にも廃止が多い年はありましたが、当時は新設が1万店規模でした。「出口だけが大きく開いている」のは、今回が初めてです。

新設の急減については、令和7年改正保険業法に基づく体制整備義務の水準が事前に周知され、新規参入の採算が合わないと判断された結果と見るのが自然でしょう(当社の推測を含みます)。言い換えれば、保険代理店業は「開業のハードルが上がった業種」になったということです。このことは既存の代理店にとって、二つの意味を持ちます。

  • 競合の新規参入が減る:既存代理店、とりわけ地域で確固たる基盤を持つ代理店の相対的な価値は高まります。
  • 承継の受け皿・買い手も減る:事業承継やM&Aを考えるとき、「引き受けてくれる新規プレイヤー」は今後増えません。承継は既存代理店同士の話になっていきます。

この数字は「改正保険業法の施行前」のもの——2つのシナリオ

ひとつ、重要な注意点があります。本統計の基準日は2026年3月末です。特定大規模乗合保険募集人に係る体制整備等を定める改正保険業法の政省令は2026年6月施行であり、今回の数字はその施行"前"のものです。

したがって、11.5%減という数字には、施行を見越した「廃止の前倒し」が含まれている可能性があります(当社の推測です)。今後については、2つのシナリオを併記しておくべきでしょう。

A
減少が緩むシナリオ

やめる判断をする代理店の多くがすでに前倒しで廃止を済ませており、2026年度の減少率は今回より縮小する。

B
減少が続くシナリオ

施行後の実務負担が現実になり、対応しきれない層の廃止が続いて、高い減少率が維持される。

どちらになるかは、次回(2027年8月公表見込み)の統計まで確定しません。「淘汰はまだまだ続く」と断定する言説には、慎重であるべきです。ただし、いずれのシナリオでも変わらないことがあります。残る代理店の1店あたり規模は拡大を続け、体制整備の要求水準は下がらない——この2点です。

経営者への問い——その規模は、選んだ規模ですか

QUESTION

「いまの組織の規模は、あなたが選んだ規模ですか。それとも、気づけばそうなっていた規模ですか。」

募集人が5人を超えれば、経営者一人の目で全員の募集行為を見ることは難しくなります。10人を超えれば、教育記録・苦情対応・労務管理を「覚えている」で済ませることはできなくなります。統計が示すとおり、1店あたり規模が年10%のペースで拡大していく市場では、この閾値を"意図せず"越えていく代理店が、毎年生まれ続けます

規模を選んで大きくなった会社と同じ水準の管理態勢を、準備期間なしで整える——それが、集約の受け皿になった代理店に求められていることです。自己点検チェックの172項目も、業務品質評価制度における保険会社との対話も、この文脈の上にあります。

関連コラム:業務品質をめぐる業界の枠組みは「損保協会『代理店業務品質に関する基本的な考え方』に全会員会社が賛同」、自己点検の全体像は「保険代理店の自己点検とは?」をご覧ください。

よくある質問

代理店数の減少は、既存の代理店にとって悪いニュースですか?

一概には言えません。母数の縮小は市場全体の逆風ですが、新設の急減は競合の参入が減ることを意味し、集約の進行は残る代理店に人材と契約が集まることを意味します。重要なのは、集約の「受け皿側」に立てるかどうか——そしてその際に、規模に見合う管理態勢を示せるかどうかです。

副業代理店の廃止が中心で、専業代理店には関係ないのでは?

廃止の内訳は統計からは特定できませんが、構成比を見ると副業が81.9%を占めており、廃止の多くが副業層である可能性は高いと考えられます。ただし、副業代理店が廃止されれば、その顧客と契約は近隣の専業代理店に移ります。専業代理店にとってこの統計は「他人事」ではなく、「受け皿として選ばれる側」の話です。

1店あたり14人という数字は、実感より大きいのですが。

この数字は全代理店の単純平均であり、大規模乗合代理店が平均を押し上げています。中央値ではありません。ご自身の会社と比べる際は、絶対値ではなく「1年で約10%増」という変化の方向とペースに注目してください。

まとめ

2025年度統計が示したのは、「代理店が減っている」ことではなく、「代理店が集約され、1店あたりの規模が拡大している」ことでした。そして規模の拡大は、多くの場合、経営判断の結果ではなく市場構造の帰結として起きています。

準備期間なしに大きくなった組織に、管理態勢をどう追いつかせるか。管理部門を自前で持つには小さく、持たずに済ませるには大きい——その規模帯に入った代理店にとって、これは避けて通れない経営課題です。KIBANの外部経営管理本部は、まさにこの課題に応えるためのサービスです。

次に読む:業務品質をめぐる業界の枠組みと保険会社との「対話」については「損保協会『代理店業務品質に関する基本的な考え方』に全会員会社が賛同——代理店は何を準備すべきか」で整理しています。

※本記事は執筆時点(2026年8月)で公表されている日本損害保険協会「2025年度損害保険代理店統計」(2026年8月7日付)等に基づく解説です。「当社計算」と付記した数値は公表値からKIBANが算出したものであり、シナリオ分析には当社の推測が含まれます。最新の情報は損保協会の公式サイトでご確認ください。

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