保険代理店経営学研究所 所長 花岡 慎(KIBAN株式会社 代表取締役CEO)は、2026年9月11日(金曜日)に開催された日本保険学会 2026年度第2回関東部会において、「保険代理店の経営理念に関する考察―120社の公表理念にみる同質性と自己規定の多様性―」と題する研究報告を行いました。本報告は、当研究所の研究テーマ「総論・基礎理論」に位置づけられる論考の一部を、学会の場で報告したものです。
「保険代理店とは何者なのか」。保険会社の代理人か、顧客の代理人か、あるいは独立した金融サービスの担い手か。保険代理店が自らをどのような存在として位置づけているのかを、各社が公表している経営理念の文言から読み解くことを本研究の出発点としました。
金融庁の「金融事業者リスト」に掲載された保険代理店から120社を抽出し、公表されている経営理念・ビジョン等の文言215件を分析対象とし、理念に現れる価値と自己規定の表現を類型として整理しました。
理念に現れる価値には、「顧客第一」「安心」「専門性」「長期的関係」「地域・社会」など一定の共通性がみられました。一方、自らをどのような存在として位置づけるかという「自己規定」には、「お客様の代理人」「一生涯のパートナー」「保険のかかりつけ医」「金融アドバイザー」など、多様な表現が観察されました。
価値の同質性と自己規定の多様性という特徴について、代理店を取り巻く共通の制度的・規範的環境や、保険代理店が歴史の中で複数の役割を獲得し、重層的に担ってきたこととの関係を探索的に考察しました。少なくとも公表理念のレベルでは、代理店各社が「自らを何者と捉えるか」について一つの答えに収斂しているわけではないことが、今回の分析から示唆されています。